こんばんは。棒磁石(@magnet_med)です。
以前、アウェアネス・リボンについて書いた記事をご覧になったでしょうか。

この記事のトップになっているのは「レッドリボン」であり、エイズとの戦いとの象徴でもあります。
さらに先日、12月1日は世界エイズデーでもありました。

覚えていない方は、ぜひ記事をご覧ください
今これを読んでいる皆さんは、エイズについてご存知でしょうか?
なんだか自分事とは遠そうなイメージを持っているのでしょうか。
もしかしたら「握手やキスでうつるの…?」という誤解を持っている方もいるかもしれません。
最終的には、エイズの薬について取り上げたドキュメンタリー映画「Fire in the blood」を紹介したいのですが、今回はまずエイズという病気についての理解を深めましょう!
エイズとは?どのような治療法があるのか?
はじめに、エイズという感染症について、基礎的な知識を整理しておきましょう。
エイズ?HIV?どれが正しい名称なの?
世の中には「エイズ」「HIV」などのややこしい言葉が飛び交っていますが、まずは整理しておきましょう。
エイズとは、「後天性免疫不全症候群」の英語「Acquired Immunodeficiency Syndrome」の短縮形「AIDS」のことであり、「病気の名前」です。
エイズの原因となるウイルスが「ヒト免疫不全ウイルス」の英語「Human Immunodeficiency Virus」の短縮形「HIV」で、これはウイルスの名前です。

エイズ:病気の名前、HIV:ウイルスの名前です!
エイズはどんな病気なの?
エイズは、その名前の通り、「後天的(生まれつきではなく、感染して)」に「免疫」が「不全」になる感染症です。
HIVへの感染によって発症し、HIVが体の免疫機能を破壊してしまうので、感染すると徐々に免疫機能が低下していきます。
次第に、健康な人では病気が発症しないような弱い病原性の低い微生物やウイルスにも感染して、様々な症状があらわれていきます(これを「日和見感染」と言います)
エイズそのものが致命的になるというよりは、免疫機能の低下によって引き起こされる様々な病気が重篤になる場合が多いです。
一般的に「エイズが発症した」と言われるのはこのような日和見感染が現れた時点のことを言い、それまでは特に大きな症状を経験しないまま、体内でウイルスが増殖している「無症候性キャリア」と言われる状態になります(この状態の時にも他者に感染します)。
無症候性キャリアの期間は数年~10年ほどと言われており、人により異なるものの非常に長くなっています。

気づかないうちに感染し、進行している可能性があるんですね…
この長い無症候性キャリアの時間のために、気付かぬうちに感染を広げている、これがエイズの怖いところです。
感染経路は?
HIVは血液や精液、膣分泌液、母乳へ大量に分泌されます。
そのため、感染経路は基本的に以下の3つに限られます。
-
- 性的感染
性行為によって感染するパターンです。
エイズの感染原因の大多数を占めています。 - 血液感染
医療現場における注射器の使い回し、また違法な麻薬の使用時の注射器の回し打ちなどによって感染するパターンです。
以前は日本でも医療現場での回し打ちによるエイズ薬害がありましたね…。 - 母子感染
発展途上国などではこちらも感染原因として非常に問題です。
赤ちゃんが産道を通る際に感染してしまったり、母乳から感染してしまうパターンです。
- 性的感染
逆に、これ以外の経路で感染することはほぼありません。
と同時に、性行為の際に適切な予防を行うことによって感染を防ぐことができます。
さらに、HIVは非常に弱いウイルスなので、患者の体外に出た瞬間に死んでしまいます。
そのため、患者と一緒に日常生活を送る中で感染する心配はありません。
- 一緒の湯船につかる
- 一緒の食器を使用する
- 患者のくしゃみ
- 患者とのキス(唾液には感染能力がありません)
- 握手
身近に患者がいると感染するのではないか、という不安によって、様々な差別や偏見が生み出されてきました。
(そのために患者がカミングアウトしづらい風潮も以前はありましたよね…)
何度でも繰り返しますが、患者と一緒に日常生活送る中では、感染の心配はありません。

これだけは覚えていただければ本望です
患者はどれくらいいるの?
患者の数は増加の一途をたどっており、日本国内ではHIV感染者とエイズ患者を合わせて約30,000人いると言われています(H29年度厚労省の報告)。
年間1,400人がHIV感染及びエイズ発症をしており、決して少ない数字ではないです。

他人事だと思わないようにしましょうね
世界に目を向けると、HIV陽性の患者数は約3,700万人と言われており、こちらもやはり年々増加しています。
世界全体では、年間約100万人がエイズによって亡くなっており、これは1分に2人が亡くなっている計算です。
これだけ衛生状態が良くなってきている世界においてこのような状況を生み出している、人類にとって最も脅威となる感染症と言っても過言ではありません。
治療法はあるの?
残念ながら、2018年現在、エイズを根治するための治療法は存在していません。
存在するのは、ウイルスの増殖を防ぐための薬です。
しかし、抗HIV薬は現在も目覚ましく進歩しており、適切な服薬を行うことによって、HIVに感染していな人と同じくらいの寿命を全うすることができるようにまでなってきました。
(治療をしない場合、エイズ発症後の予後は2~3年と言われています)
ただし、HIVは非常に耐性を獲得しやすく、ほぼ100%きちんと飲み続けないと薬が効かなくなってしまいます。
現在の抗HIV薬は非常に大きいので、正しく服薬するための工夫が重要になります。

近い将来、HIVを根治できる治療薬が開発されることを願っています!
- エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)によって引き起こされる感染症
- 体の免疫機能が低下することによって、様々な症状が現れる
- 性的感染、血液感染、母子感染の3つの感染経路にほぼ限られる⇒適切な予防を!
- 患者と日常生活で関わっても感染する心配はありません
- 日本にも約30,000人の患者さんがいるので、他人事ではありません
- 薬によってウイルスの増殖を抑えることができます
「Fire in the Blood」の世界(薬は誰のものか)
(写真:Wikipedia)
先ほど、HIV感染者数は全世界で約3,700万人と書きましたが、実はその約7割がアフリカ地域で発生しているんです。
もちろん、衛生状態の問題などはありますが、人口の比に対して発生率が異常に高く、中には人口の10%以上の人がHIV感染者である、という国もあります。
しかしながら、抗HIV薬は非常に薬価が高く、治療には1年間で約15,000ドル(約150万円)もかかります。

貧しいアフリカの人にそんな金額の薬が使用できるはずもありませんよね
つまり、薬が必要なところに届いていないんです。
この値段は「医薬品の特許料」によって跳ね上がっていることが多いのですが、これを安くしてしまうと、製薬会社も新たな薬の開発の資金を得ることができません。
「Fire in the Blood(薬は誰のものか)」というドキュメンタリー映画では、この製薬会社とエイズ治療との間の葛藤が描かれています。
こちらに関しては、近々記事にしてみようと思いますが、みなさんもお時間がある際に、ぜひご覧ください!

最後に
いかがでしたでしょうか?
エイズに対して知識を身につけていただけたでしょうか?
病気に対する理解をし、現状を知ってもらい、差別や偏見をなくしていくために、これからもこのような発信をしていきたいと思っています。
それでは、本日もお読みいただきありがとうございました!
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